みかん流!子どもコーチングの極意[全6回]もくじ
ある朝に渡された一枚の紙
僕がダイニングで新聞を読んでいると、息子のナオが暗い顔をしてやってきました。ナオはチラチラと僕の様子を伺います。
「怒らないよね?」
ナオはゴソゴソと一枚の紙を差し出しました。それは2重、3重に曲げられていました。なんだか嫌な予感がしましたが、ぼくはゆっくりと紙を広げました。目を疑いました。
算数の割合テスト 39点
衝撃!!!ぼくは驚きを隠せません。顔を引きつらせながら、そうだ!と慌てて頭の中で「11」を思い浮かべました。しばらくして気持ちが落ち着きました。
「39点だったのか…」
ナオは待ち構えています。何か言われるだろうと。僕は話します。
「ナオ…お前、割合も勉強しているんだな。すごいな。ここ解けているよ」
ナオは緊張がとけて、いつもの笑顔にもどりました。
「11」の秘密
これは僕の想像力したお話です。話に出てくる息子ですが、実際は2才(2011年現在)で、小学校にも通っていません。保育園に毎日楽しく通っています。
さて、そんな僕の勝手なお話ですが、展開に不可解な部分がありませんでしたか?39点を知った僕があわてて11を思い出し、気持ちを落ち着かせる。ちょっと変ですよね。
今回、ぼくのコーチング技術を紹介しますが、その前にこの話で出た「11」をあなたに知ってほしいのです。
「なぜ、11をきっかけに生還できたのか?」
まずはそこから書きます。
これはなに?
ナオが2歳と半年ごろの話です。僕とナオは駐輪場で自転車を駐車していました。辺りをうろうろ回るナオが尋ねました。
「これは?」
ナオが指差したのは、自転車の後ろに張られた駐輪場用のシールでした。駐輪場は月ごとに駐輪代を払うとその支払い月が記載されたシールを貼ります。時は11月。シールには11と書かれていました。
「それはジュウイチ。」
僕は言いました。
「じゅういち」
ナオは一度だけ復唱し、シールにマジックで書かれた少し斜めの11をじっと見つめていました。
それから数ヶ月の間、彼は11を見つけたら「じゅういちよ!」と嬉しそうに僕に説明してくれました。それどころか“ただ棒が二本並んでいる形”をみるだけででジュウイチよ!という始末。
1歩が嬉しい。
そしてその時がやって来ました。僕が速さのプリントをパソコンで製作しているときでした。九州に帰省していたヨメさんから、僕にメールが届きました。
生まれて初めて書いた11です。
嬉しそうに持ってきました。
この知らせを聞いて、嬉しくなりました。つい何年か前、まだこの世に存在すらしていない「彼」がです。鉛筆を持って数字を書けた。これって誰でも通る道ですが、それでも僕だって嬉しい。
お守りの効果
この11の裏話を聞いて、鋭い方はピンときたかと思います。なぜ想像上のお話のなかで、息子のナオに対して優しい言葉を投げかける展開になったのか、その理由はこの11の裏話にあるのです。
物語の中でこの11の存在を思い出すことで、僕は目の前のテストから一気に場所を離れました。そしてあの頃の彼の成長の一歩を想像しました。
あの成長の一歩を見れば、割合の問題をやっている今は大変な進展。あの「11」がいまや「%の世界」。驚きの成長ぶりです。
100点満点中で39点も正解したんだ!
あの頃には考えられない!
いやぁなんて素晴らしいことだろう!
と僕はそれを「成長」と捉え直したのです。
お守りを教え子全員分持つ僕
実はこのお守りのようなイメージツールを、自分の息子だけではなく教え子たち全員に持っています。何気なく飾られている写真を見て、グワァと想像を膨らませるのです。
まだ、出会っていないときに道ばたで出会ったときのような仮想を脳裏に焼きつけるのです。それを授業の前にイメージする。
そうする理由は1つです。私たちはつい、成長していることを忘れて欠点にばかり目がいってしまうからです。実はこれがコーチングの最初の壁。
特に僕も含めて親という立場は「こうあって欲しい」というフィルターを通して子どもを見てしまいます。この親の気持ちというのは実に強力で、いろんな物事に対して不安を増幅させます。
親歴3年弱(11年6月現在)の僕の親不安なんて情けないものです。わが子より8ヶ月も遅く生まれた子が流暢に言葉を発すると、モゴモゴ何を言っているのか分からない息子をみて「わが子は大丈夫なのか?」と不安になるのですから。
「お守り」探しがコーチングの第1歩
ここで紹介する僕のコーチング技術は難しいことは、使えないこと、覚えなきゃいけないことは書きません。やろうと思えばすぐにできる!そんな技術だけを紹介します。今回、お伝えする技術(道具?)はたったの2行です。
- あなたのお守り(子どもの成長を感じるもの)を探して下さい。
- あなたが、そのお守りを使う場面を想像をして下さい。
たったこれだけでいいのです。お守りはあなたがお子さんの成長をジーンと感じられるものでなければなりません。写真でも何でも構いません。
そしてお守りを使う場面は僕の11のように、アクシデントがありそして想像して心を落ち着かせる…。それでいいのです。
探す。想像する。
ただこれだけです。
シュミレーションが大切です
「想像するとはいっても実際、どうなるか分からないですよ?」
そう思う方もいるはずです。たとえば、僕のあのお話はあくまで想像上の話。都合よくお守りを使う場面が出るとも限りません。
ただ大切なのはシュミレーションを繰り返すことで、常に成長のワンシーンを感じ続けることです。そうすることで、実際に状況が違っていても自然と成長のワンシーンを思い出せます。
仮想でどん底を少し体感する。そこで11をタイミングよく思い出して、あの暖かい感覚を思い出す。そしてハッピーエンド。
この繰り返しです。コーチングのためのストレッチ運動でもありますので、
子どもの顔を見て想像してみて見てください。きっと
「ママ、僕の顔みて、なんでニコニコ笑っているのさ?」
と気味悪がられたら、とりあえず合格です。次のコーチング技術のステップに進みましょう。
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