横から目線でいこう

ちょっと昔の話です。教えている時に電話がかかってきたことがありました。着信は自宅からです。

なにかあったのか?

ぼくは不安になって教えている子に了解をもらって、電話に出ました。

「お父さん」

声は娘カナ(当時小学2年生)でした。

「どうした??」

と僕が不安気に尋ねるとカナは言いました。

「テーブルにあるお菓子食べていい?」

もう脱力です。
「はい、どうぞ。家にあるものは好きに食べていいよ」と答えると「やったー」と言ってカナは電話を切りました。

それを横で聞いていた教え子が、ニヤニヤしながらぼくに尋ねました。

「先生のお家では、お菓子を食べるのに了解が必要なのですか?」

「まさか。いつも好きに食べていいと話しているんだよ。でも忘れちゃうんだよ」

頭をかきながら苦笑いです。
この時期、このような「お菓子食べていい?」「明日、学校で◯◯がいるんだって」という電話が度々ありました。

ぼくも本音では、そんな些細なことで電話をしないでほしいと思っています。

でもひょっとしたら彼女が電話をかけてくる理由は、ひとりで留守番が怖い・ひとりで心細いからなのかなと思いました。

そこで当時はご家庭に相談して、自宅からの電話を了承してもらっておりました。(ちなみに今は電話をかけてくることはありません)

するとある日、教え子がぼくに言いました。

「先生って、娘さんに対してぼくと接するように話すんですね」

「そうだね。接し方は同じだね」

「なんか不思議です。お父さんって感じがしません」

そう?ぼくが尋ねました。

「お父さんってもっと上からじゃないですか。それってふつうだし。でも先生って親っぽくない」

なるほど。そこでぼくは尋ねました。

「学校の先生も上からだよね?」

「はい、そう上です」

「ぼくはどうですか?」

「上からじゃないですね。親と同い年なのにそんな気がしません」

そう。ほとんどの保護者がぼくと同じ世代です。学校の先生にいたってはぼくより年下だったりします。

「てことは父親としても先生としても上じゃない」

「そうそうそう」

と教え子は同意しました。

「じゃぁ、別に上目線じゃなくても、父親や先生はできるってことだな」

と答えると「たしかに」と笑っていました。ぼくはずっとこの調子で、多分これからもそうでしょう。