夫婦で抱く息子の算数不安−プロ算数コーチの初指導は電車の中

「この子…数の概念がない…」ある日、ヨメが血色を変えてぼくにいいました。この子とはわが子ナオのこと。まぁそれが出発点となり、ぼくが少しナオの数の認識を確かめました。

親の不安というのは、いつ、どんなタイミングで出てくるか分かりません。
一気に表れたヨメの不安の表情。息子の発達が遅れを認めるヨメでも、その能力的な不安は全く拭えてないようです。

これまで数の概念が遅れがちな子も見てきたぼくが、ここでは冷静。であればいいのですが、その不安が移ってしまい妙な胸騒ぎ。全くもって情けない。そこでヨメに尋ねてみました。

「なんで数の概念がないと思ったの?」
「だって、、この子、13が分からないのよ。おはじきが13こならべてあって、それが13だと分からない。」

それを聞いてひとまず安心する。

「あぁ数え主義で学んじゃうと幼い子は、そうなるんだよ。まだ10進法が分かっていないからね。」
「なに?数え主義?わからない。」

むむ…ご飯時にこの話をするとご飯にありつけないぞ…と別な不安がよぎってしまい、そのうちぼくが見てみるよ、と約束を引き換えに話を終えました。

それから数日後の日曜日。
家族で電車に乗っている際、ナオと話をしていたぼくは『あ、数の概念があるかを調べることを約束したんだった』と思い出し、急遽、そこで確かめることにしました。

息子との初授業は山手線の車内。
なかなか親子らしいなぁと思いながら、ぼくはピースポーズをとりながら息子に尋ねました。

「お父さんの指は何本たっている?」
「えっと…に!」

ニッコリ笑ってつぎに指を5本たてると

「いち…に…ご!」

つぎは数詞から数量のチェック。

「よんのかずだけ指をたててみて!」

すると自分の指を数えながら、4本指を立てました。
これをざっと十まで。出来るたびに、ナオはガッツポーズ。
素過程の「量→数詞」「数詞→量」は出来ました。数字は読んでいるのを目撃しているので、数字→数詞,量は恐らく大丈夫でしょう。

さて、ここからが問題。
ナオの指を3本とぼくの指10本これらを見てもらって

「今、たっている指は何本かな?」

さっきより、ゆっくりと尋ねました。
指が多くなり、いち、に、さん、数えるのも大変そうな息子。じゅう…じゅういち…で止まってしまい、

「わからない…」

と残念そうに呟きました。

「そうか、ちょっと指が多いもんなぁ…」
とフォローしながらも、確かに十以上の数について、量と数詞の認知がまだはっきりしていないなぁ、と感じました。

この5歳の段階で、20ぐらいの数を数えられる子もいれば、10以下の数量がはっきりしない子もいます。ナオは後者だと思いますが、だからといって深刻に捉えることでもなさそう。

これまで10以上の数量に触れた経験ないこと。彼の身の回りの環境が数え唱うことで数の感覚を身につけていることを考えれば、十進法が身についていないことは、自然なことかもしれないからです。

もう少し様子みだな…とぼんやり思いながらナオを見ると、この沢山の指の数はなんなのかの答を知りたそうに待っていました。
『あぁやっぱり知りたいよなぁ』と思い、身につけることは先延ばしにして、一応、答を話すことにしました。
「ナオ、いいかい?
お父さんの指が10あるね。
ナオの指が3あるよね。
じゅうとさん、だから
『ジュウサン』と言うんだよ。」
するとナオは、ハッとした表情に変わり、
そして自分の右手の指を1本たて左手の指は3本たてました。
「こうでしょ?!」
と得意げな顔。
それにはぼくもニッコリ。
ジュウサンの音から13が並んだ「形」を記憶の底から引き出したようで、それを表現するために1本指と3本指を示しました。いいアイデアです。
十進法は知らないけれど、だからといって何も分からないわけではなさそう。これからの成長が不安というより、ちょっと楽しみになりました。