視線はノートから離れない。方眼ノートに線や四角が描かれていく。
短くなった青色エンピツがそれに色を重ね、ノートはどんどん数の世界へ変わる。
しばらくして・・・鉛筆は止まる。子どもはゆっくりとぼくをみて
「分かったよ。先生。」
ひみつの宝箱を探し当てたような笑顔をうかべる。ぼくはその瞬間が好きだ。
想像力を失わない冒険家だろう。
大海が広がる。算数・数学を苦手と話していた子が、たくましい冒険家になっていく。自分の力を信じて前に進む。
「大海をわたるのに100の知識はいらない。1枚の地図と3本のウォール。これだけでいい。」
必要なものは、イメージを浮かべる「図解」という地図と、数の世界を進む「色エンピツ」というウォールだ。
船に余計な知識は載せない。大波に襲われた時、それが役には立たないどころか邪魔だからだ。
鉄の船か、帆のヨットか。
ぼくたち大人はつい忘れがちなんだよね。宝物という目的地は1つでも、行き方は無限にある。
だからぼくは伝えたい。
あなたのお子さんに個性があるように、算数や数学の歩み方にも個性があります。多くの子たちが大きなかばんを携えて、鉄の船に乗り込んでも、わが子がその船に乗り込むべきかどうか、すこし立ち止まって考えてみてほしい。
「この子は鉄の船ではない。帆のヨットを与えてみよう。」
そんな1つの選択があってもいい。
それが子どもの将来を大きく変える。ぼくはヨットの停泊港で帆をあげている。