数学『証明』の授業シナリオ– <br>1時間授業に5時間かける!?

先生はどのような板書をして、生徒とどのようなやり取りをするのか?
たった1時間の授業に、数時間かけて書くこともあります。
理由は仮想の授業の中で、驚くべき発見が見つかるからです。


■授業は進行する
依頼人が言うペンダント想像図と、
ワトソン君が拾ったペンダント図はとどうだったか?
指名し、尋ねます。
「ピッタリ重なりました」
「ほんとか・・・○○君はどうだった?」
「ピッタリ合いました」
「そうか・・・
 じゃ、明らかに違った図になったよ!って人はいるかな?」
頭の中で繰り広げられる生徒と先生のやり取り。
実は、上の文章は今私が作っている
合同の授業シナリオ【中学二年生】のワンシーンです。
ワトソン君?ペンダント?
とこの授業は一体どうなっているのだ?
と思われるかもしれませんが、
これでも大変真面目な授業です。
■A4紙たった1枚だが・・・
今、公立中学の授業支援において、
このような授業シナリオを1枚の授業プリントに1枚
といった感じで書いています。
そこには授業の板書のポイントや、
予想されるやり取りなどを記していきます。
それを読んで先生はざっとした流れを把握します。
※この通りに授業をして下さい、というものではありません。
かける時間は早いもので、2時間ほど。
しかし長いものだと5~6時間かかります。
たったA4紙1枚のシナリオ。
それも忠実な物語を書いているわけでないのに、
そりゃ、ちょっと時間をかけすぎではないか?
と思われるかもしれません。
しかしそこには私なりのドラマがあるのです。
■生徒たちは私の中にいる
プリントを作る段階で、
大雑把な授業の流れの筋というのはあるのですが、
この授業シナリオを書きはじめると、
それこそ授業を行っている感覚になります。
もちろん数学の教員免許を持たない私が、
学校の黒板で授業をしたことは一度もありません。
だからこれは全て仮想。
しかし私の中には、
何人かの生徒たちがいてシナリオを書きながらも、
その子たちと会話をするのです。
とても頑張りやの子。
数学に興味がない子。
塾で習ってもう知っている子。
何も知らない子。
学習障害の子。
4日ぶりに学校にきた子。
そんな子たちが私を見ているんですね。
先生は私たちに何を伝えてくれるのですか?
と言わんばかりの眼差しで。
■みんな参加!という目標
授業シナリオを書きながら、私は授業をする。
板書の色使いを考えて、
タイミングを図り言葉を投げる。
それが難しければ、
授業についてこれない子がいる。
簡単すぎる内容だと、
暇そうにする子がいる。
全ての子達が100%満足できる授業というのは、
現実問題としてとても難しい。
なぜなら、子供たち自身が「それぞれ」だからです。
しかしちょっとした授業組み立ての違い、
アプローチの違いで共通の興味を発生させる。
授業に何か面白みを見出せたら、
それは大変意義のあることだと思うのです。
そしてもう1つ。
シナリオを書く上で、面白いことがあるのです。
■シナリオでなければ気づけないこと
私も何度と数学を子供たちに教えてきました。
プランを練るぐらいですから、
当然、分かっていたつもりでした。
しかしシナリオを書く段階になり、
指を止めて言葉を選ぶために立ち止まって、
初めて気づかされたことがあります。
それはごく当たり前のことかもしれない。
しかしそれに私は気づけかなかった。
恐らくたとえ何度と私が授業をしても、
シナリオ制作なしでは気づけなかったことだとと思います。
授業シナリオの中には、
そういった私の知らない世界があります。
これがとても面白いのです。