おかしいぞ!新指導要領。無駄な「場合の数」

2010年度から始まった新指導要領。
小学・中学・高校と教えていく中で、気づいたおかしな事態。


■カリキュラムの無駄
先生が黒板の前でちょちょいと説明すれば済むことを、
1つ1つ子供たちが考えていく。
これは一見すると無駄な時間な気がします。
ただ正解・不正解はおいといて、
自分で考える時間は理解獲得にとても重要です。
しかし、算数や数学のカリキュラムに無駄はあってはいけません。
子供たちの貴重な人生を、カリキュラムは支配します。
慎重に吟味されて組まれなければなりません。
しかし最近、おかしいぞ?と首を傾げたのは…
「場合の数」
これについて少し書きます。
■小学生の教科書で初登場!場合の数
場合の数とは、その条件を満たす形式のパターン数を考える単元です。要は、その条件下に当てはまるものを満遍なく探すのです。
よく出てくる問題は、カードです。

例;
1、2、3のカードを使って3桁の数を作りたいとおもいます。
この3桁の数は何通りのできますか?
(1)123
(2)132
(3)213
(4)231
(5)312
(6)321
全部で6パターンあるので、答は6通り。

といったものです。
フーンっと思いますが、実はこの場合の数。
今回の指導要領改正により、
小学生・中学生・高校生で3回学習するのです。
嘘のような話に見えますが、
これは本当です。
■教える必要ってあるの?
これまで場合の数は、
中学2年生、高校1年の数学Aで学習していました。
多少、ダブルところもありますが、
内容レベルが異なりますのでそこは問題ありません。
ただこれを小学6年生に教えるのはどうなのか?
これには少し首を傾げてしまいました。
実は小学生でも学ぶ子もいます。
それは中学受験をする子たちです。
中学がそんな問題を出すのですから、
言わばやむ終えない状況で彼らは学ぶのです。
しかしこの場合の数を、
小学6年生すべてに教える必要があるのか?
と言われたら、私は反対です。
■概念が追いつかない子もいる
そもそも、高校生で分からない子は沢山います。
中学生においても苦手単元の代表格です。
そんな場合の数を極めて少ない時間数で、
小学生にちゃんと教えられるのか?
私は疑問でなりません。
例えば、樹形図。
教科書であっさりと導入されていますが、
一部の小学生には理解しがたいものです。
なぜなら子供たちにとって、
これまでなかった図だからです。
概念のレベルで考えると、時間がとても足りません。
■中学生より難しい?小学生の場合の数
あと少し気になったことがあります。
中学生の場合の数では、
組み合わせの問題が発展課題として扱われています。
順列と組み合わせの考え方の違いは、
中学生で理解してもらいたいことです。
まぁ教科書がそう扱うのであれば仕方ありません。
我慢しましょう…
しかし問題は小学生。

組み合わせが普通に出ている!

もちろんそれほど複雑な問題ではないのですが、
この組み合わせの問題の考え方自体、
理解できない子の方が多いのではないか?と思います。
(中学生にも沢山いるので…)
■小学6年生はもっとゆっくり
小学6年生はとても重要な時期です。
抽象的な扱いのものが多く、算数脱落者が続出します。
私は、学校の算数教育では概念形成に時間を充てるべきと思います。
そうしないと重要単元「割合・比・抽象的1あたりの量」がおろそかになり、これを理解せずに中学進学は極めて厳しいでしょう。
この小刻み大量指導要領。
教育学者の中には評価するという声もありますが、
学校の授業で賄えないボリュームの大きさは「改正の余地あり」と私は思います。
「教育格差がさらに拡大するのでは?」

と心配でなりません。