苦手を扱う支援コーチだから分かる「苦手克服」を目的とすると失敗する理由

春休み中、通常指導を実施しながら、臨時指導のお問い合わせ(体験指導を含む)が数多くありました。その中でも特に重点的にお話しさせて頂いた「苦手克服の危うさ」について改めて書きました。体験指導をご希望の方は、一読下さい。

「苦手克服!」
学習業界でよく見かけるフレーズのひとつです。誰でも一度はみたことがあると思います。

このところ指導の中で何度か「どうやれば苦手克服ができるんですか?」と質問を受けて度々、説明させて頂きました。この話、難しい話ではありませんが、わりと大事な話なので少しゆっくりめで読み進めて下さい。

まず、ぼくの考えをはじめにお伝えします。算数において、苦手克服を目的にしだすと十中八九で上手くいきません。

突然、何を言出すんだ…と驚かないで下さい。よく苦手克服しました!ってありますよね。ピーマンが食べられるようになった。朝、早く起きられるようになった。鉄棒ができるようになったとか。ぼくも苦手克服の経験はいくつかあります。

しかし上記のものは、特別な能力を必要をしません。大体、その気になってやればできる話なのです。

しかし算数の苦手は違います。算数は子どもそれぞれがそのとき備えている能力、それらの能力の強弱のバランスによって、学習の難易度が決まる教科です。そういった意味ではとても困った教科です。

苦手なもの失敗の連続はありえます。寧ろ失敗なく学習が進む方が稀なのです。もしあなたがここで苦手克服を目的にすると、お子さんは目標と現実との差に直面し、そして『ぼくはやってもやってもできないんだ…』と投げ出してしまうでしょう。勉強をしなくなります。失敗回避です。

さて、ここまで読んで
「じゃ、どうすればいいんですか?苦手だから…放置しておけばいいのですか?」
と思う方もいるはずです。もちろん、ぼくは放置するとは思いません。(そもそもそれを認めると職業の存在意義がなくなります)。ここで大切なのは心がけです。

「苦手であることを受け入れた上で、今よりもっとできるようになる」

これを目的とすればいい。とても短い心がけものですが、1つ1つがとても大切です。

<苦手であることを受け入れた上で>
ここは、苦手であるという事実を自分ではっきり認めるということです。苦手を受け入れられない…苦手があってはいけない、と思ってはいけません。苦手であることは誰でもあるのです。それを皆が受け入れていきています。成功している人たちは、苦手な分野ばかりです。

<今よりもっとできるようになる>
そういった中で、今よりもできるようになる。自分の過去と徹底して比べます。苦手だから得意な人のようにできなくても、今よりできるようになることは可能でしょう。それでいいんです。ここで絶対に他人と比べない。

冷静に捉えることができる

この心がけが十分に意識化できていれば、結果的に損はしません。苦手分野は、ただの10点アップの成果に膨大な時間を注ぎ込むことになります。それで10点を確保できて達成感が味わえればそれでよし!であればそれでいいのですが、やはり冷静に学習バランスをみればその算数や数学の10点分を他教科で簡単に確保することが大切です。何でも総合戦。

苦手を受け入れた上で…というのは、そこです。「自分」を冷静にみることができる。苦手であることと同時に、得意なことも見えてきます。方法も見えてくる。そうなると、苦手分野で成果を上げるのは難しくありません。

苦手分野はシンプルにこなして、ある程度の成果を確保できたら、それを保つ。保つことも苦手分野における重要な戦略なのです。