大切なのは、考える視点-近頃の僕の数学授業

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受験が近いこの頃、僕が板書を書いて説明することが少なくなりました。変わって急増しているのは視点を促す声かけ。子どもたちの視点の特性を考慮した自己解決への働きかけをご紹介します。


■解き方を覚えたが…
何が出るか分からない…制限時間が1時間弱という実力試験では、子どもたちもアップアップの状態。昨日解いたはずの問題ならまだしも、近頃、見ていない問題は解けないことはよく起こります。
「解き方を忘れた」子どもたちの言い分
この言葉そのまま受け止めれば、「何度も解いて忘れないようにしなさい!」ということになります。でもそれで成果に結びつくとは限らない。それは数学が苦手なお子さんをもつ親御さんならよく分かっているはずです。それは僕も全く同感です。
そこで僕はこの言葉をそのまま『解き方を忘れた』と捉えず、
『前に解けた問題だが、
 なにがなんだかよく分からなくなってきた』
と解釈を変えました。そしてさらに『彼らは何も忘れておらず、ただそれを引き出せないだけ』と思うように至ったです。
■そんな僕の促し方
初めて見る問題に子どもたちは、これは分からない、と言います。そして僕はたとえばこのように促しています。
「それを解くために、なにが分かればいいか?」
たったそれだけ。
しかも問題なんてろくろく見ずに、そう促すのです。そんないい加減なやり方で本当に子どもは分かるのか?と疑わしく思われる方もいるかもしれません。
でも実際のところ、それを聞いた子どもはまた問題に戻り、そして『それを解くためになにが分かればいいのか?』を想像力を駆使して考え始め、そしてあっさり自力で問題を解いてしまうことも少なくありません。
■検索しないで視点を変えよう
苦手な子の傾向としてまず問題を見るとき、「その問題を見たことがあるかどうか?」を考えてしまいます。
それで初めての問題と認識した上で、問題文を読みます。当然、見たこともない問題なので条件整理の仕方を持っていません。そして悩んで、解けないと判断します。
ここで<持っていない>ところをあえて強調しましたが、実はココが彼らのネックになるところです。持っているか、持っていないか?の判断は、すべて過去の知識の検索です。そこに入り込んでしまうと時間だけかかって、まったく実りはありません。
しかしここで「それを解くために、何が分かればいいか?」と視点を促すことで、それまで知識の検索を行っていた子どもたちは、一気にゴールと答えに行き着くための条件を探し始めるのです。
「問題が尋ねているのはココだから…
 ココを知るためには…ココが分かればいいかな。」
この問題をとく中継地点の発見が、全体のロードマップを映し出すのです。それまで見たことのない問題でも、こういった視点を広げるアプローチは十分可能なのです。
■図と色、そして視点が大事
近頃、図と色を使って分かりやすく教えることと同時に、僕が力を入れだしているのは、どのような問題にも共通する視点への促し方です。
問題の解き方を説明すると、子どもたち(特に詳細型・記憶型の子)はそれにとらわれてしまいます。また教える側も時間がかかるんです。
しかし視点への促しは、どの問題でも同じです。
自然とそういった視点を子どもたちが持てれば、これまで解けなかった問題も解けますし、未知なる問題にも取組むことが出来ます。
それぞれの問題の解き方を理解するよりも、こちらの方がずっと楽ですし、なんて言ったって子どもも楽しいようです。
だって知らないのに解けるってやっぱり気持ちいいですからね。
苦手な子への視点の促し方はまだまだあります。今度、ご紹介します。

運転席.JPG運転席:日南線の車両キハの運転席。運転したいのは子どもだけでなく、大人だって同じ。うずうず。全体写真はこちら>