算数が苦手な子に対して教える場合、情熱をもって教えるでもなく、何度も分かるまで教えるでもなく、解法テクニックを伝授するでもなく、教える前に行ったちょっと変わった関り方だけで分かることがあります。その話です。
体験授業を済ませた後のことでした。
“分かった!”の言葉を息子K君から聞いて親御さんが僕に尋ねました。
「先生!どうやって教えたのですか?」
シンプルであればあるほど、教えている僕としては複雑です。
「大したことはやっていません。」
「やっぱり図と色で教えたから分かったのでしょうか?」
きっと凄い教え方があるのだろうと思われます。
「確かに図は使いましたが、躓きの原因は別です。」
「別ですか?」
「はい、ひとつだけお願いしたのです」
たった1つのお願い「問題を聞かせて下さい」
僕が授業の中で彼にお願いしました。
「僕に問題を聞かせて下さい。」
K君は快く塾のテキストの問題を僕に読み聞かせてくれました。
「ある学級の生徒33人を・・・」
「はい、33人」
「3人の班と5人の班に分けて・・・」
「なるほど、分けたんだね。」
「そして・・・」
という作業を繰り返したのです。時折、メモをとることはありましたが、基本的に僕は彼の言葉に耳を傾ける。ただそれだけでした。するとk君が言いました。
「先生!今、分かりました!解いていいですか?」
「どうぞ」
そしてK君はガリガリとノートに書き始めて、僕はそれを横目で見ている。
答え合わせをするとノートの答えと解答がみごとに一致。
「先生に読んでいたら、急に分かりました!」
と満足な笑顔のK君。そう、分かる為にすべきことは、必ずしも教えるではないのです。