覚える公式がなく、理解したことも消えにくい本質学習。いいことずくめですが、一方で実施するにはハードルがあります。そんな本質学習について書きました。
算数が苦手な子たちを教えていると、子どもたちは口を揃えて「算数は覚えることが多すぎる」と言います。
たとえば、図形の面積の公式。教科書で紹介される公式の数は6個(長方形・正方形・台形・三角形・平行四辺形・ひし形)です。
はやさの単元はもっとすごい最大13個です。
はやさの3用法(はやさ=道のり÷時間・道のり=はやさ×時間・時間=道のり÷はやさ)、時間単位の変換公式(時間⇄分⇄秒)、長さの単位の変換公式(km⇄m)、はやさの変換公式(時速⇄分速⇄秒速)。
子どもたちが「覚えることが多い」というのも無理もありません。
ですから僕としては当然、算数が苦手な子たちに覚えるべき公式の数を減らして教えています。
あまり使わない公式は紹介しませんし、またひとつの公式で、他の公式もカバーできるならそうしています。子どもたちはそれを喜んでくれます。
しかしです。
ぼくはこう考えています。

算数に関して、本質学習をすれば覚えるべき公式はない。
本質学習。それは面積の本質・はやさを本質を理解することです。もしそれがしっかり理解できたなら公式を使わなくても解けます。
それは一体どういうことか?それを説明します。
参考として、はやさの問題を「公式」と「本質理解」で解き比べてみます。
【問題】 Aくんが時速4kmで15分間歩きました。何kmすすみましたか。
これを学校(塾)でならう算数の「公式」をつかって解くとこのようになります。

時速だから15分を「分」になおそう。
公式は「分÷60=時間」だから 15÷60=0.25時間
道のりの公式は「はやさ×時間=みちのり」だから 4×0.25=1km
答.1km
公式を2回使って求めています。問題集などの解説もほぼこの流れです。
では次に、これを本質理解で解いてみます。このようになります。

時速4kmは1時間に4kmすすむことね。15分は4つで1時間だから4km÷4=1km
答.1km
1回の計算、いや1回の暗算で解けました。
ここで出てきたのは「時速4kmとはどういうことか」という本質イメージです。1時間で4kmすすむイメージ。15分は1/4にあたるので、4でわればいい。考え方がとてもシンプルです。
本質理解は身につくと消えにくい・発展性が高い
本質学習のいいのは「腑に落ちたら理解はずっとつづく」ということです。1年、2年たっても消えません。もし消えたとしても、本質的な部分にふれれば理解がもどります。
また算数の本質はとてもシンプルです。2年生のかけ算、3年生のわり算の本質を身につければ、その後の4・5・6年生の抽象的な分野もスムーズに理解できます。
ある女の子が「人口密度は1㎢の四角のお皿に乗っている人の数」と言いました。
なるほど。
5年生でまなぶ数の抽象的な世界を「2年生の感覚」にうまく置き換えられてます。本質理解ができている子ならではの表現だ、といたく感心しました。
本質学習の難しさ
それなら子どもたちみんなに本質学習にすればいいじゃないか。そう思うかもしれません。
それがなかなか難しい。
その実施には「その子の特性・おかれている状況・学習への姿勢」などの条件が関わってきます。
たとえば学校の公式的なやり方に従順な子なら、無理に本質学習へ持ち込めません。たとえその場で教えたとしても学校のやり方に従います。
またイメージ想起が難しい子も、本質学習になじみません。1時間と15分の大きさの関係などイメージが難しければ、その後の展開でどうすればいいのかわからないのです。
現在の本質学習の取り入れ方
実際にぼくが「本質学習」を実施しているのは、教えている子全体の20%ぐらいです。
それ以外の子は、最初でも書いたとおり公式の数を少なく教えて、部分的に本質理解をとり入れています。
これからも、できるだけ多くの子たちに本質にふれた学習を目指したいと考えてます。それが長い時間視点でみれば、大きな学びの財産になるからです。