子どもを混乱させる相似な三角形の2つの面積比

中学受験の算数において、算数が不得意な子が特に混乱する公式といえば「面積比の法則」。今回、その違いをイラストで紹介し、混乱を引き起す問題を紹介します。

混乱させる三角形の面積比の法則とは?

法則が2つあるんです。ひとつは「高さが等しい図形の面積比は、底辺の長さに比例する」というもの。もうひとつが「相似な図形の面積比は、相似比の二乗にあたる」というもの。

この説明だけだと分かりませんので、次にそれぞれの面積比の法則を簡単に説明します。

高さが同じ三角形の面積比

下のような高さが等しい2つの三角形があったとしましょう。

面積比と底辺比の関係01
2つの三角形は、底辺が一直線上に並び、高さが同じ。

この2つの三角形の面積比は、底辺の比と等しい。

面積比と底辺比の関係02
三角形の「底辺比」と「面積比」は等しくなる。

これは三角形の面積の公式、「底辺×高さ÷2」のなかで「×高さ÷2」の部分が全く同じだからです。実際、具体的な数字で確かめてみると、すぐに分かります。

この公式そのものについて、子どもたちはスムーズに理解します。

相似な三角形の面積比

以下の2つの三角形は相似です。

相似な図形の面積比01
2つの三角形は相似。相似比は2:3

底辺の比が2:3なら、それぞれの高さの比も2:3です。ということで

相似な図形の面積比02
相似な三角形の面積の比は相似比をそれぞれ2回かけたもの

面積比が分かります。面積の比は2×2:3×3=4:9。この考え方も「相似比をそれぞれ2回かければいい」ということで、難しくはありません。

でもこれが両方出てくると、図形が苦手な子は超混乱します。そこで2つの法則が混乱しないを紹介します。

2つを使う平行四辺形の問題

その両方の面積比の法則を使う代表的な問題が、この平行四辺形の各面積比の問題です。

平行四辺形の面積比の問題解説01
平行四辺形ABCDがある。相似な図形を探す。

この平行四辺形をつくっている三角形3つと四角形1つの面積比を求めてみます。

1.相似な図形を探す

まずはじめに相似な図形を探します。

平行四辺形の面積比の問題解説02-1
相似な三角形(顔のところ)の相似比は対応する長さの比となる

すぐに、砂時計型の相似な三角形が見つけられます。(ここで顔を描くと分かりやすいです)対応する辺の長さが分かっていますので、相似比もすぐに分かりますね。

相似比が分かったところで、続けてこの書き込みです。

平行四辺形の面積比の問題解説02-2
対応する辺に比を書き込む。この習慣が次のステップに繋がります。

対応する辺の比を丁寧に描き込みます。

図形問題が不得意な子は、この書込みを疎かにします。相似が分かる→辺の比を書き込む。これが次の法則への布石となります。

2.高さが等しい三角形を探す

平行四辺形の面積比の問題解説03
Aに頂点をもつ2つの三角形は、底辺を2:3とする高さが同じ三角形

ここで緑線に注目すると、高さの等しい三角形が見えます。そうこの三角形は底辺の比が面積比になる。ここが正念場です。

二組の三角形を指でなぞりながら「顔の方は相似比からの面積比であり、緑の三角形は底辺比からの面積比になる」と確認します。

問題を解きすすめる前に、2つの面積比の公式がここに存在していることを、しっかり確かめます。

3.相似比から面積比を求める

ここで相似比から面積比を求めてみます。相似比を二回かけたものです。

平行四辺形の面積比の問題解説04
相似な図形の面積比は相似比から求められる。

緑で塗りつぶした三角形の面積比は9:4と分かります。さて、次です。

4.底辺比から面積比を求める

今度は、三角形ABEに注目です。ここでハッキリと意識を変えるように、ぼくの場合はイラストを書き込みます。(さらに面積比4の三角形を隠したりします)

平行四辺形の面積比の問題解説05
左の三角形ABEは底辺の比を使って求められる。

この面積を底辺の比を使って求めます。先ほどの②:③の赤の書き込みから、比例式がたてられます。

②:③=?:9
?=6です。

平行四辺形の面積比の問題解説06
底辺比2:3が2つの三角形の面積比になる。三角形ADEが9なので三角形ABEは6と分かる。

三角形の面積比は求められました。最後に右側の四角形部分です。

5.合同な三角形から四角形の面積比

平行四辺形の左上と右下で、2つの三角形にわけてみます。対角線を共有する2つの三角形は合同。

左上の面積比は、先ほどの面積比を合わせて15。右下の合同な三角形も15です。だから四角形部分の面積比は15−4で、11となります。

これで全ての面積比が分かりました。

最後に

2つの面積比の法則をそれぞれ理解することは、難しくありません。難しいのは複合的に絡んできたときです。

その視点の切り替えをつかんで、図中に潜む法則をつかむことが大切です。

平行四辺形の問題を使って、スムーズに何度も練習を積むといいと思います。