計算が不得意な子が「一次方程式」の山を乗り越える。しかしその後にさらに複雑な「連立方程式」がやってきます。
- 「いま自分がどこをやっているか分からなくなる」
- 「やっていくうちにグチャグチャになる」
ワーキングメモリの弱さで引き起こされる「連立迷子」はよくある躓きです。
この記事では、そんな「連立迷子」を避ける「ノートデザイン」について実際のやり取りを含めて「加減法」の教え方を紹介します。
迷子の原因は「解き方の種類・手順」が多いから
これは、はっきりしています。
連立方程式は「加減法」「代入法」と2種類あります。それぞれにもいろんなパターンがあり、これらを一気に学ぶことで混乱を引き起こします。
その混乱がノートの空白に計算を書き散らして、結局、自分で何をやっているのか分からなくなってしまう結末へとなるのです。
そんな混乱状況を避けるために、ぼくがやっていることは3つです。
- 覚えること(手順)を可能な限り減らす
- 混乱ポイントを抑える
- 計算を形式化する
これができれば、お子さんはスムーズに計算ができます。
授業実況
ノート1ページを使う
1問にノート1ページを使います。
ノートの左上に2式をかきます。2式の隙間は「2行ほど」あけます。
連立方程式(加減法)で最初に扱うのは、難易度が高めの「係数両倍型」です。

【詳細な説明はこちら】なぜ両倍型から先にするのか?
連立方程式(加減法)はいろんな計算パターンがあり、一般的な教え方は「係数が揃っているパターン」から、徐々に複雑なものへとステップアップしていきます。
- レベル1:係数が揃っているパターン
- レベル2:片方に係数を揃えるパターン
- レベル3:両方とも係数を揃えるパターン
しかしこの方法だとレベル1〜3は別々のパターンとして認識され、手順(覚えること)が増えます。ワーキングメモリへの負荷が大きいです。
そこでぼくは「レベル3:両方とも係数を揃えるパターン」をはじめに扱っています。
このパターンは他のパターンを含んでいます。これをはじめに乗り越えさえすれば、子供にとって他のパターンは「手順が減っているラッキーパターン」となるのです。
すぐに手順を説明します。4つです。
- そろえる係数の上に最小公倍数
- 倍する数をかく
- 右に筆算式をかく→解く(Yが分かる)
- 左に戻って代入→解く(Xが分かる)
手順2「倍する数をかく」がとても重要です。ここさえ押さえられたら、あとは楽です。
そろえる係数の上に最小公倍数
まず、加減法とは「1文字を消して方程式にする」という目標を説明します。
今回はXを消してみるね。その準備を始めるよ!
はい
Xの係数の最小公倍数を上に書くよ

続けて2式の項の上に薄く印をつけます。この動作が連動している印象を強く与えます。次の手順です。
【最小公倍数を書く理由】
式の上に最小公倍数を書くことで、次のステップの「倍する数」がイメージしやすくなります。
倍する数をかく
手順を確認します。
- そろえる係数の上に最小公倍数
- 倍する数をかく【←ココ】
- 右に筆算式をかく→解く(Yが分かる)
- 左に戻って代入→解く(Xが分かる)
Xの係数を見るよ。符号は同じかな?
同じです。

同じだね!よし、じゃあ、先に倍スペースに『ー(マイナス)』を書いちゃおう!消える魔法だ!

ここで「この魔法が一番、大事だ」と何度も、何度も、何度も、強調します。
次に最小公倍数にするには、それぞれ何倍すればいい?
5倍と3倍です
それを書き込みます。そして他の項にも広げます。

【マイナスをかく理由】
次のステップの筆算で「たし算」のみで扱うためです。混乱しやすい筆算のひき算ミスの原因を取り除きます。
【それぞれの項にかける数を書く理由】
頭の中で「それぞれにかける数」を保持し続ける必要がなくなるため、脳の疲労を大幅に抑えることができます。
ノート全体のレイアウトはこんな感じです。

ここまでが山場です。あとは丁寧に「形式」を守っていけば大丈夫です。
右に筆算を書く
まず手順を確認します。
- そろえる係数の上に最小公倍数
- 倍する数をかく
- 右に筆算をかく→解く(Yが分かる)【←ココ】
- 左に戻って代入→解く(Xが分かる)
そのままかける式を右に移動します。それを筆算として処理します。

この筆算はすべてたし算です。簡単です。
つぎの方程式(係数消し)もスムーズでしょう。

Yの値がでました。ここで左に戻ります。
左に戻って代入
手順の確認です。
- そろえる係数の上に最小公倍数
- 倍する数をかく
- 右に筆算式をかく→解く(Yが分かる)
- 左に戻って代入→解く(Xが分かる)【←ココ】
もう最後のステップです。倍で準備して・筆算を解いて・戻ってくる。サラッと確認をします。
さぁ、Yは自分が何者かわかった。自分の村に戻ろう。自分の家につづく道をつくるぞ。
そして式のYの文字まで線で繋ぎます。

今回、あらためて代入する式を書き出しました。
こうすることで「前のステップ」と「今のステップ」が交わりません。
代入すれば、あとは見慣れた一次方程式です。もう一方の文字の値を求めておわりです。

この両倍型を2〜3回ほど練習します。
慣れてきたら変化球として、「係数が揃っているパターン」や「片方に係数を揃えるパターン」をやっていきます。
自信をもってもらいます。

そして係数が揃っているパターンです。戸惑うお子さんもいます。いつも通りに処理するように伝えます。

後の項の係数を合わせる
これまで前の項の係数を合わせる問題をやってきました。ここで初めて後の項の係数を合わせるパターンをやります。

【このタイミングで後の項の係数を合わせるパターンをやる理由】
一般的な教え方では、最初の段階で「どちらの項の係数を合わせるか?」の判断をやります。
しかしこの判断は、高度な条件分岐(推論)を要求し、それをワーキングメモリに配慮すべき子がやると脳は疲弊します。
そこで、まだ手順が定着していない段階ではそのステップを避けて、自然にできるようになってから扱うのです。
ひと通り、基本的な連立方程式の加減法は終わりました。ここからさらに磨いていきます。
練習は「最初のステップ2まで」を繰り返してやります。

この練習では、答えまで出しません。
- どちらの文字を消すか?
- マイナスをするか?
- それぞれ何倍するか?
この3点を次々に正確に練習します。
【最後まで解かせない理由】
大切なのは、はじめの「判断」ステップです。ここを連続練習して完璧に身につけます。※その後の工程は多少忘れても構いません。記憶はすぐ復活します。
まとめ
いかがでしょうか。ワーキングメモリに配慮した連立方程式(加減法)のやり方は、一般的な方法と学ぶべき順番が異なるので驚かれたかと思います。
とにかく脳を疲弊させないために、極限まで手順を減らし、一方で間違いやすいポイントでは丁寧な書き込みをする。
この形式を身につけさえすれば、基本的な加減法はミスが少なくできると思います。ぜひ、お子さんに紹介してみてください。
代入法についてですが、ワーキングメモリに配慮がいる子について教えるタイミングはさらに慎重でなければなりません。
改めてご紹介できればと思います。
