課題「角度の計算をどう学ぶか」
前回、固定分度器をつかって、代表的な角度をつくるトレーニングをしました。

これでワーキングメモリに配慮しながら、角度の存在を認識できました。次のステップは「角度の加減(計算)」です。
しかし、ワーキングメモリへの配慮が必要な子(または流動性推理が低い子)が「角度の計算判断」を身につけるには、まず「角の補数関係」を理解する必要があります。
解決案「教具で対応できる問題作成」
お子さんは角の補数関係を教具を使う中で理解しつつあります。
ですから計算プリントはスムーズに解ける時と、わからなくて手元の教具でその形を作って考える場面の2つを想定しました。
角は大きく配置
プリントの問題はA4紙に4問のみ。教具の角パーツをそこに当てて考えることも可能としました。
角度を示す扇型は実際の紙面では半径1.3センチほど。これは一般の問題に比べて大きくとっています。大きくとったのは、子どもたちが角の存在をうまく掴めない時、色を塗ってフォローするためです。
角度はその外側に配置しました。
タイトルを消した
まず、視覚ノイズを排除するためです。
また、タイトルに角度の計算とあると「たし算?ひき算?」と計算処理に目がいきすぎて、肝心な補数関係への想像を見落としてしまうからです。

角度は教具で扱ったものに絞る
問題に登場する角度は7通り(180・150・135・90・60・45・30)です。
どれも教具の角パーツで登場した馴染みの角です。プリントに角パーツを当てて、教具にも角度パーツをあてる。
「これは教具でやったことと同じなんだ」と確認して、心理的な安全を与えます。
さて、このプリントを2名のお子さん(小学四年生・五年生/ワーキングメモリが低い)に実施してみました。
結果「プリントの教具対応は成功だった」
たし算の問題を8問・ひき算の問題を8問実施しました。
たし算の問題
2人とも教具を利用しました。1人の男の子は「たし算だ」とわかった上で、教具に当てはめて確認をとっていました。
自分の予想が合っていて自信をつけていました。



もう1人の男の子は、実際にその角度の教具を当てはめて答えを導き出していました。
教具でズルをしたように見えますが、これで構いません。流動性推理が弱い子たちが、補数関係から「たし算」へ移るなかで、補数関係を確かめる経験がたくさん必要なのです。
最後の方では「あ、これ、たし算じゃない?」と笑って言いました。
ひき算の問題
角度の問題で難しいのは「ひき算」です。
流動性推理が弱い子は、ひき算の前にたし算的な思考で「あと何度を加えればいいのか?」と考えます。
ここでも補数関係とたし算が大切になります。
45度+□=60度
□の数をもとめるためにいろんな値(5度・10度)と入れます。見ている側は「それ引き算じゃん!」とまどろっこしいところです。でもじっと見守ります。

その解決思考の中で「たし算の式の一部を求めるときはひき算だ」と気づけばいいのですが、今回は2人ともひき算まで辿り着けませんでした。
ここで良かれと「それはひき算だよ」と説明したくなりますが、それは「算数への反発を強めること」になりかねません。

教具を使って2人とも全問正解でした。
これで「ぼくは角度がでいきる」と本人の気持ちがあがりました。
角度の計算プリントなのに、計算をしていない。それは子供の状況に応じて判断することが、最も大切なことだと思います。
今後の課題「固定分度器・プリントにもう一工夫」
教具とプリントの関係を深めることで、よりスムーズにそして深く学べると思いました。
固定分度器の使いやすさを、もっと追求する必要がありそうです。
- 角パーツは工作用紙2枚をかさねて、持ちやすく丈夫にする。
- 教具のメモリを見やすくする(135度・45度は特別に追加する)
- 固定分度器は扇形の段差とする(そうすることでより操作性があがる)
プリントは見やすさなどデザインを向上させる必要があります。
- 線幅を太くして多少の角度の幅をとれるようにする
- 子供の心理にあわせて問題をうまく配置する。
早めに改善へと移りたいと思います。
子供の角度の計算でお悩みの保護者・先生へ
角度の計算を学ぶ上で大切なことは2点です。
- 「角度という量」の存在を知る
- 角度の補数関係を知る
この2点を飛び越えて「角度の計算」を教えても意味がありません。計算は後回しにして構いませんので、角が生み出す数の世界に十分に触れて概念形成を確かなものにしたらいいと思います。
