「長方形の面積=縦×横」――。公式をただ暗記して、ひたすら計算ドリルをこなす学習になっていませんか?
このやり方で進めると、少し形が変わった複合図形を見た途端、「どことどこをかければいいの?」と手が止まってしまいます。
これは子どもの意識が「図形の構造」ではなく「計算に使う数字探し」に向かっていた証拠です。
この状態のままでは、やがて中学で学ぶ「等積変形」の理解も難しくなってしまいます。では、どうすれば公式の丸暗記から脱却し、図形の本当の広がりを理解できるのでしょうか?
今回は、独自の教具とプリントを連動させた具体的な指導プロセスを余すことなくご紹介します。
プリント設計で気を配ったこと
まず授業の狙いは「面積と全体と部分の関係を理解して計算できるようになる」。ワーキングメモリへの配慮を心がけることを目指しました。
紙面の説明情報を消した
これは「角度の学習で実施したプリント」と同じ考えです。
余計な視覚情報でワーキングメモリをとられたくない。やることは口頭で告げるので、単元名・問題文もなくしました。
組み合わせのパターンを精選する
教具「長方形パーツ」とプリントは連動していて、解く際はプリントの問題図にピッタリはまる長方形を探します。
ここでたくさんの長方形があると、選ぶだけでワーキングメモリと時間を多く消費します。
2、3回で正しい図形に辿り着けるように長方形パーツは「小3種類・中3種類・大3種類」にしぼりました。
(三角形も用意しましたが、それは授業進展によって利用)

あえて長さを書かない
一般的な教材では各辺の長さを記載し、長方形の縦と横の長さをかけ算します。
【公式】縦×横=長方形の面積
しかしそれでは、子どもが「かけ算処理」にばかり意識が奪われて、本質となる面積という存在を蔑ろにしてしまいます。
そこで面積は「1平方センチメートルの正方形の数」を踏まえながら、数量の規模を掴むことを念頭におきました。
これは教具を使った実寸大の面積プリントだからできることです。
そしてひとつひとつ丁寧に定規で線をひき、図形を書いていきました。はい、超アナログです。
実際の授業へ
宿題に出していた計算プリントは全問正解。そのあとに
「今日は面積ね」
といって男の子に面積教具とプリントを渡しました。

基本図形の面積
1枚目のプリントは、それぞれの長方形パーツの面積を求めます。
パーツを紙面の上に置いてピッタリとはまるものを探します。そして縦横定規で長さを測ります。
今回、長方形パーツは方眼マスが見えるので、本人はそれで長さを知っていました。

公式を教えることなく、1㎠の正方形の数をかけ算を使って求め始めました。

想像以上に早く進みました。わかると早いですね。
複合図形の面積(たし算でもとめる)の問題
2枚目の面積プリントは複雑な図形の面積です。長方形パーツを組み合わせて、たし算で求めます。

ここでお子さんの賢さが光りました。
1枚目のプリントで求めたそれぞれの長方形の面積を2枚目でも使ったのです。
「6㎠と16㎠をあわせて‥22㎠だね」
なるほど。1枚目にそんな活用があったのか。それでこちらの想像よりもずっと早く2枚目が終わりました。

まずい…プリントがない‥
これは嬉しい悲鳴です。
複合図形の面積(ひき算)その場で問題作成
そこでプリントの裏に新しい問題を作成しました。長方形パーツの外側を鉛筆でなぞっていきます。その内側に小さなパーツを置いて、その外側をなぞりました。
お子さんが横でじっと見ているなかで、あらたな複合問題(ひき算バージョン)が完成しました。
「こういうことでしょ」
複合問題と同じ状態をパーツで再現してくれました。

うん、そうだよ
このパーツとパーツの間の面積を求めること。
それをお子さんは「量の減少」ととらえず「量の全体と部分関係」として捉えています。これは概念形成として理想的です。

ひき算で面積を求められると分かりましたので、三角形パーツを使いました。ぼくが作ったのは台形。
さくらじまと名付けました。
そこでちょっとした事件が発生。お子さんが組み合わせたパーツがこれでした。


最後に本人が休憩しているときに、ぼくは工作用紙で合同な三角形を2つ用意して平行四辺形を作図しました。
この面積わかる?
すぐにやってくれました。
学校で平行四辺形の面積を扱うのは来年(5年生時)です。しかしすでに彼は「面積は方眼の集合数」と本質理解ができています。
ぼくは『これもできるはず』と確信をもっていました。すると平行四辺形に三角形パーツを合わせるところで、ちょっとだけもたついたものの(ぼくはドキドキ)、無事、長方形として考えられて「15㎠」と答を導き出しました。

今回の発見と今後の課題
今回の発見
- 教科書ではさらっと流されがちな「面積の基本単位」に対して、教具と問題をうまく連動させると面積の概念が深まり「公式」に頼らなくても自然に式を立てられた。
- 手で触って操作する長方形パーツは量の全体と部分の関係や保存関係を実感する上で効果的だと確信。
- パーツはある程度の厚み(厚い画用紙2枚重ね)があると操作しやすい。
- 教具を扱う際は周りにものを置かない。
今後の課題
- 長方形パーツを増やさずに、問題の種類を広げる(1枚5問×4枚)
- 広い面積(㎡・㎢など)への教具展開をどうするべきか検討する。
今後も教具をつかって面積の概念形成を育みたいですね。

