「生産向上」について算数で教えたよ

昔、ぼくが教えた子たち(もう青年)と座談会。その中で作業の話があがりました。

その青年らが各個人であたっているのをきいて、ぼくが「それ、効率が悪いとおもう」とたんを発したのがはじまり。

久しぶりに算数の授業が始まりました。社会で役立つ算数です。

ひとりひとりの努力じゃない

月に1度の座談会は楽しいですよ。

もう20歳になろうとする青年たちと1ヶ月の間にあったことを聞いたり、気づいたことを伝えあったり。

1つのことについて深く討論したり。

彼らが社会人として、アドバイスをする。

まぁぼくが言えることなんてたかが知れていますが、例えば仕事について、フリーランスだからこそ、組織の良さ=強さもわかる(つもり)です。

話題の発展から「生産向上」という話になり、その関心がもたれたのがこの話題でした。

どちらが優秀な人材?

ぼくが出した例は以下の通り。
200個の製品を2人(太郎・次郎)で作ります。

工程は2つ(作業1・作業2)があります。1個の製品を作ろうとする2人の作業時間は以下の通り。

仕事のやり方−各個人
太郎君:
《作業1》3分
《作業2》5分
作業時間は8分

次郎君:
《作業1》7分
《作業2》6分
作業時間は13分

さて、どちらが優秀な人材でしょうか?

仕事のクオリティー同じとすれば、仕事が早い太郎君が優秀と言えるでしょう。

でも、これって違うんじゃない?というのがぼくの考え。ぼくが提案したのはこうです。

仕事を分担する

仕事のやり方ー分担
太郎君:
《作業1》3分×2
作業時間は6分

次郎君:
《作業2》6分×2
作業時間は12分

どちらが優秀か?なんて取っ払ってしまおう。そしてそれぞれが得意な工程を2人分やってしまう。

太郎君はどの工程をとっても、次郎君よりも早いわけですが、工程2においては次郎君と太郎君の差は1分だけ。

それならば太郎君は工程1を集中し、次郎君は工程2を集中する。そうすることで全体の成果は飛躍的に上がります。

各個人で製品2つを作るのにかかる時間は、8分+13分で21分でした。それが分担になると6分+12分=18分

たかだか3分の差にしかみえませんが、これを200個分続ける話であればどうなるか…ご想像におまかせします。

協力するとさらに凄いことに

さらに突っ込んでいけば、太郎君と次郎君の生産スピードの差はあるため、作業1が完了した製品は溜っていきます。

太郎君は作業1が終わった時点で、次郎君と一緒に作業2に取組む。

こうするとさらに成果は上がります。

計算式は省きますが、製品200個を作る作業時間は「各個人でやる方法」だと990分(16.5時間)です。

「分担かつ協力でやる方法」なら710分(11.8時間)で済む。これが個人とチームとの圧倒的な差なのです。

世の中の生産向上策の多くは間違い

ぼくは青年たちに話しました。

「このような間違った方策に、いつか絶対ぶつかると思う」

近年、ブラック企業が囁かれているけれど、その多くは仕事のやり方・評価が間違っています。

自ずとブラック化している可能性は高いでしょう。

例えば賞罰信仰の強い進行管理のチーフなら、太郎君を「君、とても早いね!」と誉め讃え、片や次郎君を「お前、遅いな!」と叱りつける。

もう頭のてっぺんまで個人評価の罠にひっかかり、組織の衰退に繋げている。

地頭で考えれば分かりそうなことが、なぜ、分からないのか?スパッと回答しました。

「算数が活かせていない」

このような基礎レベルの生産向上策が分からない人がいるので、自分から上手く改善の方向へ働きかけることの大切さも分かって欲しい、と締めくくりました。

最後に

社会へと進もうとする元教え子たちとの座談会、これは本当にたのしいです。

問題をひたすら解いている時には、伝えることが出来なかったことが沢山あります。

社会に出る前に、是非、身につけて欲しい。

今、教えている子どもたちにも、何かの折にこのような算数の使い方を見せたいなとも思っています。