今、教えている2〜3人の中に長さや距離をつかむことが難しい子がいます。メモリを読むことは出来るけれど、パッとその長さを尋ねられてもそれに近い数で回答できない。そういった子への指導の一例を紹介します。
数を使って距離が応えられないとは
4m向こうの壁を指でさし「ここからあの壁まで距離は何mですか?」という問いを投げかけると、算数が不得意な子のなかには
「100mかな…」
と回答したりする子もいます。こういった子は、まだ数量として距離をつかめていません。その原因を遡ると
- センチとメートルの単位の違いを身につけていない。
- その距離の間に1mがいくつ入るかわからない。
- そもそも長さの概念がない。
となります。上のどの原因に該当するか?それは1つであったり、複合的だったりします。その後、その概念が身につく学習を行ないます。それですぐに成果が出る子もいれば出ない子もいます。出ない子の保護者は、当然、不安です。
「なぜそれが出来ないのか?」
「いつそういった能力は身につくのか?」
と質問をよく受けます。それについて正直に応えます。
「出来ないのが能力障害によるものか、発達過程の遅れか判断がつきません。その能力がいつ身につくのかも、分かりません」
保護者の不安の表情はのこります。しかしここで思考停止してはいけせん。
原因がなんであれ、まずは、その距離を認識できるようになる。ここが大切ではないかと思います。確かに、視覚的につかむことは難しいでしょう。それであれば「身体的に」その距離をつかみ、その経験を基に知識として距離感覚を形成すればいいのです。
身体動作で距離をつかむ
先例の「立ってる場所から数メートル先の距離をつかむ」についてこうしています。まずぼくは子どもたちに、向こうの壁まで大股で歩いてみよう、と促します。
1ぽ、2ほ、3ぽ、と歩数を声に出して壁まで歩きます。
そして話します。
「むこうから、この壁まで4歩だったね」
「うん」
「それならこの距離は4メートルぐらいだよ」
このようなトレーニングを続けます。そして徐々に、何歩で到着するか?まず予測させて、実際に歩数を声にだして数え、確認します。
これは「大股1歩=1メートル」の知識と手に入れて、歩数の経験を基に距離をつかむやり方です。見ただけでは距離がつかめなくても、このような身体的な経験をもとにすれば数として距離をつかむことができます。次第に自分の目算で、距離を考えることができるようになります。これは教科書を読んでも学べません。
身体感覚をつかう学び
数量として距離を知ることはこれだけでありません。長い距離は時間との統合を図ったり、短い距離(長さ)はゆびを使ったりします。とにかく算数が特に不得意な子は、このような実生活と数量の関係を身近に認識させることが大事です。このような働きかけが、長期的にみて学習の成果があがっていることを実感します。
近ごろ算数困難について、認知度があがってきました。「算数の困った」は単元テストより日常生活の中に潜んでいます。それに早く気づいて、適切にサポートすることが大切です。
以前、LDは「学習障害(Learning Disability)」と言われていましたが「学び方のちがい(Learning difference)」と認識が変わってきています。こう言ったその子の学び方のちがいを活かした支援が必要だと思います。良かったら試してみて下さい。