小学生にとって場合の数は、難しい。中でも「並び方」と「組合せ」は厄介です。中学生・高校生も苦労するんだから。それを教えている子に身近な例(プロ野球)で説明をしたら、これが好評。ちょっとご紹介します。
まずは、並び方と組合せのちがい
今回の記事は、2分だけお勉強が要ります。ちょっと読んで下さい。
①5人から「トイレ掃除役」と「にわ掃除役」をえらびます。
この選び方は何通りありますか。
②5人から「へや掃除役」を2人えらびます。
選び方は何通りありますか。
この2つの問題は似ていませんか?
どちらも5人から2人を選らぶって話です。違いは何かと言いますと①はそれぞれ違う役です。②は同じ役ということ。
この微妙な違いは何通りあるかを計算する上で大きな違いです。算数や数学では①を並び方(順列)と言い、②を組合せといいます。違いが分かりましたね。
やっぱり分からないぞ
この説明を聞く分には「ふーん、そうですか」となります。でも小学生は納得できなかったりするんです。確かに丁寧に違いを図示されれば分かる。ただ、やっぱり一人になって考えると
で…組合せって何だろう?
となってしまう。それが理屈で言えば分かるけれど、実感としてないんですね。「そりゃそうだ」と腑に落ちたい。(ちなみにこのような認識を「直観」といいます)
野球好きに「好きな打順を教えて?」
そこで、今回の野球好きな男の子、Sくんの登場です。彼も組合せが腑に落ちない小学生。首を傾げるSくんに、ぼくは野球の話のなかで説明しました。
「巨人好きだよね?」
「はい」
「好きな打順①②番を教えてくれない?」
自然を装っています。
「①長野 ②重信ですね」
そこでぼくは、うんうんと頷きながら
「ぼくは①重信 ②長野だな」
とゆっくり答える。はい…と頷くSくん。
「あ、じゃ同じだねぇ」
「違いますよ…」
「え、なんで?」
「ぼくは①長野 ②重信です。
先生は①重信 ②長野。だから違いますよ」
「そうか、そうか…違うのか」
そして打順の次にこんな質問を続けました。
「じゃ好きな選手を2人教えてよ」
Sくんは嬉しそうな表情。もう待ってました!といわんばかりです。
「好きな選手は小林と阿部ですね」
「ほぉ〜」とぼくは感心します。そしてまた同じくこう言います。
「ぼくはさ、阿部と小林が好きなんだ。君とは違ったな」
すると、え?という表情を浮かべるSくん。
「先生、同じですよ。小林と阿部でしょ。同じじゃないですか。」
今度はぼくが「え?」という番です。
「何を言っているんだ。きみは小林と阿部だけど。ぼくは阿部と小林なんだ。」
「だから同じですよ。小林・阿部。どちらも好きなんでしょ?」
ぼくはニンマリ。
違いを彼は知っている。
この後、ぼくはSくんに説明しました。打順の話では、①重信 ②長野という順番に大きな意味がある。だから、ぼくが反対の打順を同じように扱ったとき「違う」と意見しました。これはそれぞれの並びに意味があるのです。
一方、好きな選手の話では、小林と阿部の順番に大きな意味はありません。だからぼくが彼が好きな選手の順番を反対にして伝えたとき、それは同じだ!といいました。
こどもたちは、ちゃんと分かっています。
趣味や嗜好は強力な助っ人
誰でもそうだけど、遠い存在のもので話をされるより、身近なもので例えられた方が分かります。以前、書いた記事(数学嫌いのガンダム好きに「正負の数」をこんな風に教えたら一発で理解した話)でも同じですね。普段から特に触れているものの方が、想像を膨らませやすい。
具体的な体験をもとに、算数の考え方を学ぶ体験主体の学習はとても効果的なのです。