算数指導のポイント(4)かけ算-2

【かけ算はたし算の簡易計算ではない。】
前回の記事でそう説明しました。
この記事では、そのかけ算の本質を分かりやすく説明します。
あまり知られていないかけ算の世界を、是非、ごらん下さい。


今回かけ算を説明するに当たって、
かけ算とはどのような計算方法なのか、
まず、それを説明しなければなりません。
ただこれがなかなか難しいのです。
イメージ感覚で表現すれば、
「同じ調子で続く全体量を求める計算方法」
という感じでしょう。
これでは何を言っているのか分からないので、
簡単な問題を使って説明します。

お婆ちゃんは毎日必ず3個の梅干を食べます。
1週間で梅干を何個食べているでしょうか?

お婆ちゃんは梅干を必ず1日に3粒食べているわけですから、
月曜日も、火曜日も、3個食べることは間違いありません。
こういった計算は
3+3+3+3+3+3+3=21個
でも構いません。
(画像参照)

ただ、梅干の食べる量は、1日単位でみると3個。
この1日単位で食べる梅干の量と、
同じ調子で7日間食べるのであれば、
これはかけ算を使って求めることも可能です。
次の画像をよく見てください。
(画像参照)

1日単位の梅干の量は3個で、
それをどの程度同じ調子で食べるのかというと…7日間。
この様な1単位分の量とそれが続く量を使って、
3×7=21という計算で囲まれた量を求めるのです。
■この原則は小数でも同じ。
このイメージで一度導入できれば、
お子さんが小数の世界のかけ算で躓くことはありません。
ごく当たり前の事として、概念の形成を図ることができます。

1mが3gの針金があります。この針金を4.3m用意するとき、重さは何gですか。

「針金は一定の太さだから、
どこも重さが同じ調子で続いていることは間違いない。
1mが3gなら、4.3mならこんなイメージだ。」
(画像参照)

「だからこの全体量はかけ算で求められるぞ。」
と分かるのです。
この様にかけ算は、同じ調子で続く全体量を求める計算方法なのです。
そしてかけ算のイメージは必ず長方形(正方形)になります。
だから、もしこの文章問題が、

1m31gの凸凹でどこも重さが均一でない角材があります。この角材を2.3m用意すると、重さは何gですか。

このような問題ではかけ算は使えないのです。
■どう教えればいいか?
さて、そんなかけ算をどう教えればいいのか。
これが指導者が悩みの種。
ほんと、難しいのです。
考慮するべきことは沢山あるのですが、
重要な指導のポイントは大きく2つです。
(少し専門的ですがお許しください。)
ポイントの1つ目は
同じ調子であることをイメージで確認できたうえで、
「かけ算が使える」と子どもに判断させるきっかけを与えることです。
その判断の為に同じ調子で存在しない場合の問題も含めて、
判断力を築いていけばいいと思います。
ポイントの2つ目は、
そのイメージの帰着から離れないこと。
この四角い図を軸にかけ算の判断をすれば、
小数の計算の構造理解も分かります。
分数の計算構造も理解できます。
よくよくは割合の考え方も
この図で決着をつけることが出来ます。
この図に留まってかけ算を捉えることで、
多くのことが学べるわけですから、
ここから離れることはもったいないわけです。
また、いろんな問題を1つの図に置き換えることで、
お子さんの算数の土台が強固に築かれます。
■かけ算はそれでも難しい。
とここまでかけ算指導のポイントを
長々と説明してきましたが、
かけ算の指導は本当に難しいものです。
その大きな理由のひとつとして、
かけ算を習う小学2年生では、
まだ十分な資質が備わっていないというのもあります。
資質が備わっていないからといって、
教えないわけにもいかず、
先生方はあれやこれやと工夫をしているのです。
とにかく
九九を覚えることがかけ算をマスターする。
ということではないことが、ご理解していただけたでしょうか。
それが分かって頂けただけで、僕としては嬉しい限りです。