散らばったおはじきの数を数えるとき、10のまとまりを作って考える。中学年、高学年になっても、これがなかなか出来ない子がいます。その原因として、10進法が身についていない可能性が高いですが、親御さんたちの関心は「それじゃ、どんな風に数を捉えているか?」だったりします。こういった子たちがどんな風に数を捉えているのか、その一例を書いてみました。
数は読めるが…分かっていない
たとえば「23」という数を見せて、これを「にじゅうさん」と読むことはできる。しかしおはじきを渡して「23こ、用意して」と言うと、ひとつひとつ1からカウントして、21…22…23がでて、23番目までを指差し「はい、23こ」と用意する。
「なぜ、そんな面倒なことをするの?」
と疑問に思うでしょう。おはじきを集めるのは簡単です。
①10ずつの集まりを2つ用意する。
②3つ用意する。
わざわざ、1からカウントをする必要はありません。それが小学1年生なら未だしも、中学年・高学年になってもそのやり方でやってしまうと不思議でならない親御さんも多いです。ときどき、こんな質問を受けます。
「なぜ、うちの子ははじめから数をカウントするんですか?」
まだ10進法の存在を取り込めていないからです。でもそれでは腑に落ちない。その子がどんな風に数の世界を捉えているか、知ってもらうといいと思います。
2桁以上の数は「漢字」
多くの人は、例えば23という数を10の位と1の位で捉えます。それぞれの数字が指しているものは別です。2は10を指していています。数量を表す記号であることを、それを多くの人は無意識に理解しています。
しかし十進法を身につけれていない子は、数を「漢字」のように捉えていることが多いのです。「活」という字は「さんずい」と「舌」を組み合わせてできていますよね。それと同じように、二桁以上の数「23」は「2」「3」という数字で作られている<漢字>なのです。これがどのようになるのか。
文字からお経の世界へ
文字と捉えている子達の数の世界は、永遠に続くお経の世界だったりします。「23個あつめて!」という問いを受けて、(多くの人が10を2つね…と想像する代わりに)以下のような、文字の並びを歩み始めます。
1-2-3-4-5-6-7-8-9-10-11-12-13-14-…21-22-23
23の文字が出てくるまで、ものを指差していきます。
数字が延々と並んでいる子もいれば、言葉が延々と並んでいる子もいます。
この10進法がない数の世界を知った親御さんは「頭が痛くないそうですね」といいましたが、ほんとそうなんです。10進法を肌感覚で身につけていない場合、その世界は捉えようもない途方もないものなのです。
だから10進法が身についてない子に「23個はこれだよ」と、10の束2つと3つを集めてもにわかに信じなかったりします。数えていないのに分かるはずがないよ!と言われます。それも理にかなっています。
位のワクを作るフォローがいる
どうすれば10進法が身につきますか?という質問を受けます。これについて「こうすればすぐに身につく」という方法は、今のところありません。
これらは法則として取り込むものだからです。ただ数を漢字として認識しないように、マスを使って位ワクをつくり、位を想起させるようなフォローはできます。
23の2の上に10の棒の形があれば、「10の棒の数が2つぶんだよ」という簡単な説明で10進法を分かりやすく説明できます。ぼくが無料プリントで視覚的なイメージやワクに拘るのは、そのためです。
最後に
今回の話は10進法が分からない子の一例です。実際は、それぞれがちがった世界にいます。ただ多くの人が捉えている数の世界と認識が違うことは、分かって頂けたかと思います。
10進法が身につかないというのは、10進法が見えていないということです。そのための適切なフォローを送ることが、自己肯定感を失われずにできる算数教育だと思います。