受験算数の計算力を考える上で「がむしゃらに計算する」より、複雑な計算を簡単な計算へ変えることのほうが大切です。そのための計算の工夫を紹介します。
受験算数の計算問題は、学校で習う計算と比較にならないほど複雑です。1問の計算問題に分数・小数の四則計算が入り乱れるのはごく普通です。
お子さんはそれを解く計算力をつけるために毎日計算練習をしますが、ただ闇雲にやってもなかなか正解率・スピードも上がりません。
大切なことは、お子さんがいつも楽しみながら計算の工夫を心がけることです。そのような日々の心がけによって、3分かかった計算が1分でできるようになり、計算のミスも減っていきます。
今回、ここで紹介する計算の工夫は、とても簡単で、利用機会が多いものばかりです。ぜひ、実際に使ってみて身につけてみてください。
1.キリのいいたし算(たし算移動)
10や100といった答えがキリのいい数になるたし算を組み合わせる工夫です。
15+34+66+85 =(34+66)+(15+85) =100+100 =200
2.キリのいいひき算(ひき算移動)
「ひく数」と位の数字が同じ数になっているものはひき算をするとキリのいい数になります。それを組み合わせる。
69+37-19 =69-19+37 =50+37 =87
3.ひき算まとめの術
ひき算が2回あるとき、ひく数をカッコでまとめて1回でひき算をします。
40-12-18 =40-(12+18) =40-30 =10
4.キリのいいかけ算(かけ算移動)
5×2,25×4,125×8といった数字の計算は10,100,1000といったキリのいい数になります。必ず押さえたい工夫です。
25×6×4 =25×4×6 =100×6 =600
5.キリのいいわり算(わり算移動)
かけ算・わり算がある計算の中で除数を見て、わり切れる数があれば割ってしまいます。
40×5÷8 =40÷8×5 =5×5 =25
80÷8÷2といった計算で8÷2を計算してはいけません。これは「÷8÷2」というわり算をわり算するという禁じ手です。わり算の工夫では特に注意してください。
ここからステップを少し上げた「計算の工夫」を紹介します。
6.たし算の「ふやす・へらす」
+98などの『あとちょっとでキリがいい数なのに!』というときに、つかう計算の工夫です。一方の数をキリのいい数のために増やしたら、もう一方の数を増やした数だけ減らします。
249+498 (249-2)+(498+2) =247+500 =747
繰り下げが苦手なお子さんにとって強い味方となる工夫です。
7.ひき算の「へらす・へらす」
ひき算の「ひく数」はキリがいい数が好まれます。『あとちょっとでキリがいい数なのに!』というとき、「ひく数」を増やしたら、引かれる数を減らします。「ひく数」を減らしたら、引かれる数を増やします。
386-99 =(386+1)-(99+1) =387-100 =287 535-198 (535+2)-(198+2) =533-200 =333
これはたし算の「ふやす・へらす」とゴッチャにしないでください。
8.キリのいいかけ算つくり
キリのいいかけ算(かけ算移動)の応用です。25×28という計算で「これが25×4」だったらと思います。28から×4を作るのです。
25×28
=25×4×7
=100×7
700
これは5や125といった数が計算の中に含まれていたときも同じです。
9.同じかけ算のまとめ
計算の工夫といえばこれ!というくらい有名です。同じ数のかけ算が続いていたら、一気にまとめましょう。
4×3.14+5×3.14-3×3.14
=(4+5-3)×3.14
=6×3.14
=18.84
今回、こちらで紹介したのは計算の工夫の初歩的なものばかりです。もしお子さんがこのような工夫を気にしていないようでしたら、まず、やってみることを強くお勧めします。
そのためにお子さんが計算の工夫をしていたら「これはいい工夫だね」と褒めてあげてください。見える正解よりも見えない過程に対して評価される方が、お子さんはより強く肯定感を抱きます。
計算の工夫をはじめると計算へのストレスが軽減して、計算そのものがパズルのように面白くなります。また、これは受験算数に限った話ではなく、中学・高校の数学の計算力への大きな飛躍にもつながります。
短期的な計算時間の1秒2秒を気にし過ぎて追い込まれる計算ではなく、長期的な目線で計算の工夫を磨いてその先にある高度な数学の世界で正しい計算力を生かしてほしいと思います。