計算が苦手な子が「わり算の筆算」で気をつけるポイントを手順別に解説

もしお子さんが3年生の「かけ算の筆算」でつまずいた場合、おそらく4年生の「わり算の筆算」でもつまずきます。

つまずきを避けるためには、ふつうの筆算の手順に特別な手順や工夫を加える必要があります。今回、それについてわり算筆算の手順を10に分けて解説します。

数量の概念が弱い・ワーキングメモリが低いとった弱さから、たし算・ひき算の筆算でつまづいた場合、わり算の筆算でもつまずくことがほとんどです。

そこで今回の記事では、わり算の筆算の手順を10にわけてその代表的なつまずきと対処方法を解説します。

わり算の筆算の手順別のつまずきとその回避法

1.商の位置を決める

つまずき度〈★★★☆〉

わり算の商を立てる位置にまるをつける

わり算の筆算において、はじめにつまずきやすいところが「商の位置」です。学校ではほとんど触れられませんし、一見、スムーズにクリアするお子さんもいます。

しかしわり算の筆算でつまずく子の多くは、この最初の一歩目で誤解をしてることがあります。「商は一番前の位置に立てる」と思い込んでいるのです。

もしお子さんにこのような誤解があったときは、従来の筆算学習にはない「商の位置を正しく決める特別な練習」をとことん積みます。

そのまま従来のやり方の癖がついてしまうと、その後の矯正が非常に困難になります。とても注意が必要です。

それについては以下の記事で詳しく書いております。

参考記事:計算が不得意な子は「わり算筆算の商たて位置を決める動作」を身につけよう

2.わり算をする(1回目)

つまずき度〈★★★☆〉

◯の中にわり算の答をかく。

商の位置を正しく決められたら、答えを書く位置を間違えることはありません。わり算の答えを書くべきところに、かけ算の答えを書く間違いが多いです。

なぜこのような間違いをするのか。それは、わり算をする際に答えを探るために九九を唱えます。その唱えた九九の答えを書いてしまうからです。

つまずきの回避策は、このわり算の答えは「上」・かけ算の答えは「中」・ひき算の答えは「下」とそれぞれ書く場所が決まっていることをマルを書いて認識してもらいます。

マルを書くことで、何をすべきかが見えてきます

また、わり算のたてる手順がとても困難な場合は、九九の段階のわり算を筆算形式で解く(15÷3など)という練習をやった方がいいでしょう。急がば回れです。

3.かけ算をする(1回目)

つまずき度〈★★☆☆〉

よくあるかけ算でのつまずきは、「たてた商とどの数をかければいいのか分からなくなること」です。

つまずき回避策は、「わり算の答がわられる数にタッチして、下へと移動するというイメージ」です。「かけ算タッチ」といいながら、上の数(わり算の答)と左の数(わられる数)をかけて下に書くという練習をします。

4.ひき算をする(1回目)

つまずき度〈★☆☆☆〉

ひき算をする

比較的つまずきは少ない場所です。ここで起こるつまずきは「ひき算ができない(引かれる数より引く数が大きい)のにひいて答えを求めて手順を続行してしまうこと」です。

数の大小の認識が弱い・ひき算の概念がよく身についてないお子さんによく見受けられます。

このつまずき回避策は「ひき算ができるかどうかしっかり確認すること」です。慣れないうちは一緒に確認するといいでしょう。

5.わられる数より小さいかチェックする

つまずき度〈★☆☆☆〉

ひいた数1はわる3より小さいかチェックする

わり算の手順「たてる・かける・ひく・おろす」にない手順です。なぜ、このような手順を設けたかというと「ひいた数の答がわる数より小さくなっていることに気づかない」つまずきがあるからです。それに気づくためにこのようなチェックをします。

これはすべてのお子さんが必要な手順ではありません。また手順を減らしたいお子さんは、これを止めることもあります。

6.次の位の数を下ろす

つまずき度〈★☆☆☆〉

ひいた数の横に5を下ろす

つまずきは比較的少ないです。まれに起こるつまづきが「下ろす手順そのものを思い出せない」また「下ろす場所を間違える」というものです。

この二つのつまずきは「ひいた答の横にくっつけるというイメージを強調すること」で回避できます。

7.わり算をする(2回目)

つまずき度〈★★★★〉

15÷3をする。

わり算の筆算の2回目から難易度はさらに上がります。そしてここがわり算の筆算の最大の難所です。

よくあるつまずきは「「次に何をすればいいのかわからない」です。「つぎはたてるだよ」「わり算だよ」といってもどこになにをすればいいのかピンと来ません。

このつまずき回避法は「まるをつける」です。

上から「わり算・かけ算・ひき算」となります。

またわり算ということが分かっても「何を何でわればいいか分からない」というつまずきもあります。

原因は、わられる数が下にあり、わる数が上にあり、さらにその上に「その答えを書く」という位置関係です。これまでと逆になっているので混乱します。

この部分でつまずきが見られた場合は、先を慌てずに「この箇所のみを適度に練習するのが効果的」です。

それはかけ算の筆算が「右から左へ進む動作」と「かけ算・たし算の混合計算」に対して、わり算の筆算は「左右・上下と複雑な動作」と「わり算・かけ算・ひき算の混合計算」ともっと複雑になるからです。

8.かけ算をする(2回目)

つまずき度〈★★★☆〉

数が増えすぎて分からなくなる。

ここも難所です。よくあるつまずきは「数が増えすぎて、何と何をかければいいのか分からない」というものです。

ここでのつまずき回避策はやはり「かけ算タッチ」です。「わり算の答」と左の数(わられる数)をかけて、下に書きます。数はどんどん増えていますが、やっていることは同じと伝えます。

9.ひき算をする(2回目)

つまずき度〈★☆☆☆〉

ひき算をする

この難易度もつまずきのポイントも1回目のひき算と同じです。

10.わられる数より小さいかチェックする

つまずき度〈★★☆☆〉

あまりの数があった場合、わられる数より小さくなっているか確認します。

この後のわり算について

この後に、3桁÷1桁のわり算の筆算を習うと同じ動作が3回続きます。この2回動作がうまくいかないうちは、3桁÷1桁へ移るのは見合わせた方がいいでしょう。

また、さらに4年生の中頃に「2桁÷2桁・3桁÷2桁」のわり算の筆算を学びます。÷2桁の筆算は、÷1桁よりも手順が複雑になります。

お子さんの習得状況に応じて、「どのレベルまで扱うのか?」などの的確な判断が求められます。

学習過程の全てを消化しようとすると、算数嫌いに拍車がかかり今後学習がさらに困難が予想されます。計算は、算数と切っても切り離せないものだからこそ、無理のない練習とレベルの設定が大切です。