スタートに“戻る”は、ほんとは“進む”こと

問題解法の筋道を考えるとき、一度、真っ白にするというものがあります。これはムダだったと思われますが、その「もどる」むしろ「前に進む」を意味しています。その話です。

算数における迷子

迷子になった時は、分かる場所まで戻ってみる。
これは子どもが街を駆け回る時の迷子にならない原則ですが、算数も同じです。

問題が解けないとき、助けを呼ぶ(=解答を見る)これは最後の手段にとっておいて、じぶんで記憶を地道に遡り、分かるところまで戻ってみる。
分かるところからもう一度、問題を静観し、そしてまた新たな解法の道を探す。
その繰り返しです。

戻ると時間がかかる

わざわざ分かる所まで戻ってみるのは時間がかかります。
スムーズにいけば1~2分で終わる問題を、5分…6分…時には10分以上も考えることもあります。

「沢山解かなきゃ駄目だ!」

と考える親御さんや先生たちは、子どもが遡って考えていることをムダと考えがちです。
こんなことでは試験時間が足りない…
なんでこんな簡単な問題が…
イライラしてしまい、解いている横から口を出してしまいます。でも遡って考えているところを邪魔してはいけません。戻って考えているのは、一見、無駄なことにみえますが、こういった時間は「算数世界の再構築の時間」なのです。

再構築の時間

戻る時間は、これまで自分が知った概念や、定義をじっくり考える時間です。
1つ1つの概念から出発して、他の問題で得た理解を組み合わせる。行った道を戻り、また進んでいく、そしてまた戻る。

その思考の軌跡が、しっかりとした算数の世界を築くのです。
例えるならその進退のくり返しによって、頭の中の思考の道筋を拡張し、よりスムーズな幹線道路をつくっている。そして徐々にひろい算数の世界地図を描いているということです。

算数の問題演習における「戻って考える」は、算数学習をさらに高める重要なステージだと言えるでしょう。