算数の重要単元のプリントは、何度も構成・デザインを変更します。近頃は、教え子たちの認知特性にあうように「段階的配慮」を心がけたプリントに注力してます。そこで今回、ぼくの頭の中の整理もかねて、プリントの段階的配慮について書きました。
悪いのは問題の出し方
よく配布する市販の問題集を使いながら「この子にあった教材を用意できれば、きっと今よりももっと楽に学べるんじゃないかろうか」と思うことがよくあります。
小さい解答欄、情報過多な紙面、大量の問題数、長々とした解説文など。お子さんによっては鬱々となったのは当然といえば当然です。
少しでも多くの子が抱える問題に配慮しつつ、それぞれの特性から生じるつまずきへの配慮を、教材や学習の仕組みのなかで用意できればいいんです。しかしそれは簡単ではありません。
そんな中、近ごろプリントを制作するときに注意する「段階的配慮」は、1つのやり方としていいと思ってます。今、制作している「単位をかえる」で説明します。
段階的な配慮をする「単位をかえる」
「単位をかえる」は、小数点の位置で単位を変えることを目標としたプリントです。小数点の位置で単位を変えること自体は、特に珍しくはありません。
紙面の上には、単位の小数点の位置を示しています。紙面の下には、問題が12問。ただ、このプリントはその子の理解度と必要な配慮に合わせて、紙面構成を3段階に変えます。
紙面の上をみて取り組む[配慮1段階]
まず、単位の小数点の位置を覚えているお子さんは、紙面の上を折り曲げて取り組みます。もし単位の位置で忘れていたならば、紙面上を元に戻して確認します。
単位の小数点の位置を覚えていない子は、上にある単位の小数点の位置をみながら下の問題に取り組みます。小数点の位置さえわかれば、単位を変えることができる。この達成を目的としています。
問題に方眼がつく[配慮2段階]
単位を変換するときに、数字と数字の間をぴょんぴょんなぞりながら、小数点の位置をきめます。この「なぞりながら、小数点の位置を決める」動作が難しいお子さんがいます。操作をしながら、数字と数字の境目が分からなくなるのです。
その配慮として、方眼のある紙面を設けてます。その数字と数字の間を意識できて、動作もスムーズになります。数字と数字の間をしっかり飛んで目的の単位へとたどり着く。この達成を目的としています。
小数点の位置をつかむ[配慮3段階]
単位の小数点の位置をみても、各単位の小数点の位置関係をうまくつかめないお子さんもいます。たとえば、kmはmの右にありますので、mをkmに変えるときは小数点の位置は右に移動します。しかし一部のお子さんは、ここで左に移動してしまうことがあります。
そこであらかじめ問題にそれぞれの小数点の位置を載せて、正しく位置を見てもらいます。そのそれぞれの位置を見た上で、変えるべき単位の小数点の位置をつかみ、正しく回答する。この達成を目標とします。
状態にあう配慮を
このプリントは基本となる紙面は同じです。その中に、状況に応じて求められる配慮を挿入していくものです。普通の問題プリントを作るより設計に時間がかかりますが、よりお子さんの状況にあった学習が行われるので有効と思います。
これからも作っていきます。