子どもたちに伝えたい「何でもないことの愉しみ」について

人も歩けば愉しみにあたる、という状態をめざそう。

算数・数学の授業の休み時間、または授業の後に、子どもたちと「たのしいこと(面白いこと)の話をします。

子どもたちの「たのしい」というのは「遊園地・ショッピング・アニメ・音楽・ゲーム」というものが大体90%です。

一方、僕の趣味について話すと、子どもたちははてなマークを10個ぐらい(ときには30個ぐらい)抱えながら尋ねます。

先生、それ面白いのですか?

面白いよ

盛り上がりないです

この趣味は「古道を尋ねる」というもの。ちょっと爺さん臭いですか?これ、若い頃から好きだったんですけど…。

趣味なのだから人それぞれでいいと思います。ただ、子どもたちに伝えたいのはそういうことじゃない。

そこで、そのたのしみ方の一例としてぼくの「道」の楽しみを紹介します。

古江戸地図をつかった江戸の道しらべ

アイフォンのアプリに「大江戸古今めぐり」というものがあります。これは江戸時代の地図と現在の地図をほぼ正確に合わせたものです。

現在地から、現在の地図と江戸時代の地図を確認できます。

授業の休み時間に、一部のお子さんに話をしました。その時のやりとりを再現したいと思います。

見せたのは2年前に散策した「大田区の立会川近辺」です。

さて立会川の今はこちらなんだ

それがどうしたんですか?

縦に旧東海道という文字が見えるね

これって江戸の東海道ですか?

どうだろう。江戸時代にタイムスリップしてみよう

江戸時代にある!

正解!

そう、旧東海道というのは、江戸時代の5街道のひとつ。ここをあるけば京都へ着きます。

面白いのは東海道のすぐ右は遠浅の海だったということ。これにはみんな驚きます。

もうすこしよくみてみます。立会川の位置は変わっていません。(これは珍しいことです)

しかし江戸の地図だと支流がある。

高知の大名「土佐守豊信」の屋敷あとに支流が流れています。

この支流はあるかな?

ここで現代の地図に戻します。

ないです

本当に?よーくみて…

気づかなかったのでちょっと色を塗ってみました。

川の跡だ!

薄水色でぬった道が川の跡でしょう。

江戸時代の川の多くは、時代が進むにつれて暗渠されました。その川跡って道になることが多いのです。

面白さ、分かりました?

さぁここからが本番です。

実際にその場所へ向かいます。

左の矢印が実際の立会川です。右の矢印が暗渠になった川の方向です。

15mほどずれて撮影したのがこちらです。

川のあとは細い道で構成されています。

遠くをみるとゆったりと曲がっています

東京にはたくさんの不思議な道があります。このように微妙に細かったり、微妙に波を打っていたり。

歴史や地理や地形を知りつつアンテナをはっていれば、ふと「これは臭うぞ…事件だ」と鼻が効くようになります。

江戸の道臭といいますか

大正13年と書かれてあります。東京大空襲を免れた橋でしょう。

これでぼくの「古道を尋ねる」はおしまいです。


今回、ダラダラとぼくの趣味を書きました。

この趣味についてぼくが子どもたちに伝えたいことがあります。

この「古道を尋ねる」は「楽しみ」ではなく「愉しみ」だということです。

子どもたちがいう「たのしい」は「楽しい」です。

「楽しい」は客観的・受動的です。与えられた状況や空間を楽しむものです。レジャー施設などはそうです。もちろん、それはそれでいいんです。

でも「愉しい」もある。

これは主観的・能動的です。心の内側から湧き上がる喜びがあり、そこに意味・創造性を見出していく状態を表します。

Googleによる「楽しい」「愉しい」の違いを少し整理したのがこちら↓

特徴楽しい愉しい
性質客観的
受動的
外的
主観的
能動的
内的
要因与えられた環境
イベント・モノ
自分の考え方
意識・工夫
ニュアンス明るく満ち足りた気持ち心から喜び
晴れ晴れとした状態
パーティーが楽しい趣味に没頭する

「愉しい」の威力は絶大です。なんでもない時間や場所に面白みや豊かさを感じられます。心は満たされた状態になります。

でも残念ながら「愉しい」はすぐに手に入らない。

どうすればいいんですか

学ぶことです

学ぶ理由って「お金を得るため」ではなく、世の中を見る目の解像度を上げて、何でもないものを楽しめるようになる、と捉えたらどうでしょう。

子どもたちの心の資産はずっと増え続けると思います。

あなたはどう思いますか?