時計の時刻はよめるのに、時刻の5分前や10分後が分からない。低学年のお子さんならよくみられる躓きですが、大人の立場からみると不思議でなりません。今回は、時刻の前後で躓く子どものいい分に「なるほど!」と納得してもらえたらと思います。
時刻の前後がわからないって何?
えっと…今、4時です。10分前は何時何分でしょうか。
答は簡単です。10分前だから針を戻してしまえばいいですね。問いの答は「3時50分」です。ごく日常的に大人が行なっている時計の計算です。しかしこの問いに小学2〜3年生の一部の子は
「4時10分」
とキッパリと答えます。いやいや、それは10分後でしょ。4時の10分前だから4時10分ではないよ。というわけで大人たちは
「10分前だから針を戻すんだよ。前だからね。」
と教えます。丁寧に。子どもは分かったような分からないような表情…ちょっと気がかりですが、そこは構わず
「じゃ、4時の10分後!は何時何分か分かる?」
と質問。するとしばらく考えて
「3時50分」
とキッパリと答えます。オイ!違う違う!今度こそ「4時10分なのに!」なぜ、見事に反対になるんだ?と大人の感覚からするとよく分かりません。
時間の前後が逆転する子どものいい分
「なんで4時の10分前は、3時50分だと思ったの?」
子どもの声に耳を傾けます。すると子どもたちは、大体不満そうにこう言います。
「10分前だから、前だから…針の前だと思ったんだもん」
ぼくは十数年前ににこの判断の理由を聞いた時、ちょっとした感動を覚えました。子どもの判断の理由が何を意味しているか?分かりますか。子どもは「時計の針」に自分自身を投影させているんです。
時計の針の立場で考えている
自分が歩いていると想像して下さい。自分が進む方向の10m向こうなら「10m前」と言います。また、進む反対の方向の10m向こうなら、10m後と言います。動いている自分にとって、目の前は前だし。その反対は後ろです。
これを時計に置きかえてみましょう。時計の長針が12時を指しているなら、進行方向は1の文字盤。つまり10分前は、針の立場からみれば進行方向(1の文字盤の方向)から10分向こうの位置になりますよね。
ではそんな厄介な誤りをどのように正せばいいのでしょうか?
時間を「長いテープ」で見る
時間を長いテープで捉えるといいでしょう。時のはじまりが「前」にあたり、時の終わりが後ろになります。
テープという時の中にいる人にとって、過去は「時のはじまり」の方向…前になります。未来は「時の終わり」の方向…後ろになります。
また一日を表す午前と午後も午の位置(正午12時)からみてもいいです。1日のはじまりは1日の前部分ですし、1日の終わりは後ろ部分です。ここから子ども想像しやすいです。
最後に
この時計の前後の問題で引っかかる子ってチョクチョクいますが、ぼくは「本当に賢い」と思っています。その理屈は大人も納得できるものです。これは貴重な発見と捉えて、大事にしてあげたいですね。