『英単語が覚えられない』と嘆く彼にぼくはどうやって「覚え方」を探したか?

どんな覚え方をすればいいか…ネット検索じゃ答はでない。10回書いても覚えられない、というお子さんに「彼の中」から“正しい覚え方”を探し出しました。

うちの子(中1)が英単語を覚えられません…彼の相談のって頂けませんか?と指導先からお話がありました。塾の英語先生は「何度も書きなさい」と言ったとか。

ぼくの本業は算数数学の学習支援。打つ手がない様子だったので、とにかく問題の解決へと一歩足を踏みだしました。

『英単語 覚え方』ググってもダメ

さて、問題解決を考える上で情報収集(ネット検索)を開始しましたが…すぐ止めました。ぼくが知るべきは「優れた覚え方」ではなく「この男の子にあった覚え方」でした。

どんなに優れた覚え方でも、その子にあっていなきゃ意味がない。とというわけで、本人にいろんな覚え方を試してみて成果を検証することにしました。今回の記事は、そのレポートです。ザザザーッとごらん下さい。では、はじめます。

1.目的

『初見の英単語を和意から英単語へ書けるようになる。』
まず、ゴールを明確に。単語が分かるとか、読めるではなくスペルが正しく「書けること」です。

2.試みの各条件(記憶のための知覚刺激)

単語のスペルを覚える為にどんな知覚への働きかけがあるのか。ひとつひとつの動作(記憶のための知覚刺激)を5つあげました。

  • 英単語(Apple)を見る
  • スペルを唱える(エーピーピーエルイー)
  • 読み(アップル)を唱える
  • 読みを聞く
  • 英単語を書く

3.試みの共通条件

親しみのない単語を2語をあげる。
時間:約1分
回数:7回ほど

試みの各条件(1回目)・結果

各1〜5単体で実行してみる。

 試みの各条件 単語1 単語2
英単語(Apple)を見る  × ×
スペル(エーピーピーエルイー)を唱える  × ×
読み(アップル)を唱える  × ×
読みを聞く  なし なし
英単語を書く  × ×

結論

1〜5単体では覚えるのは難しい。どれも1つの動作だけではダメでした。まぁそれで覚えられるとは思っていません。さて、ここからが本番です。今度は複合で進めます。

試みの各条件(2回目)

次に1〜5の覚え方を組合わせです。英単語を書くという運動を軸に、べつの動作を加えます。結果には光が…

 試みの各条件 単語1 単語2
書く+読み唱える ×
書く+スペル唱える ×
書く+単語をみる × ×
書く+読みを聞く なし なし

結論

スペルを唱えると覚えやすい。2つの動作を同時にすることで、覚えられることが分かりました。それまで全く覚えられなかった単語でしたが、成果が見えてきました。

ここで改めて彼と話をしました。その中で、どうも彼の優先知覚(視覚・聴覚・体験・読解・記述)は「聴覚」みたいです。
優先知覚については『こどもの優先知覚をつかった教え方のポイント』をごらん下さい。
そういえば歌を口ずさんだりします。それならこの知覚をより使うことにしました。そこで3回目の試みです。

試みの各条件(3回目)・結果

単語をみて、読みを唱えすぐスペルも唱えながら単語を書く。例えば、appleを覚えるならappleをみて「アップル・エー・ピー・ピー・エル・イー」と唱えながらAppleを書きます。

試みの各条件 単語1 単語2
書く+読み唱える

結論

単語をみて、読み・スペルを唱えながら単語を書くととても覚えやすい。

試みを終えて

本人は結果(読み・スペルを唱えながら書く)にたいへん満足していました。「それまでの覚え方が自分のやり方ではなかったんだ」と納得。
さらにこの試みの後、1時間後に抜打ちで覚えているかチェックをしたんです。するとそこでも覚えていました。

まとめ

ぼくはどうやって覚え方を探したか?
ここではじめの問い対する答です。それは『その子の優先知覚をさぐり、複数の知覚刺激を試してもっとも成果があったものを探し出した』です。難しいことは何一つしてません。人の覚え方はそれぞれです。だからそうしたまでです。覚えにくい一般的な方法(書く)を、ただグダグダと実行するより効率的だったと思います。

そうそう。今回(彼の不得意な知覚だったので)話に出てきませんでしたが、他の優先知覚なら試みが考えられますね。
視覚優先
・イメージ(リンゴの絵)と単語を並べる
体験優先
・別の動作を加える
・身近な体験をその単語で表現する
記述優先
・例文を書く
読解優先
・辞書を使って派生など調べてみる
もし記憶や理解においてお困りの親御さんは、お子さんの優先知覚を調べてみることからお勧めします。

あと今回の「優先知覚」から覚える方法は、初期記憶において強くかかわってきますが、長期記憶には及びません。

覚えた単語を長期記憶へ移行するには、その知識を使う頻度(リピート回数)・派生の知識などが強く関係しています。覚えたら繰返しの学習は必須です。覚えたら是非復習をさせてみて下さい

この記事の文中で紹介した記事です
こどもの優先知覚をつかった教え方のポイント